tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

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賃金問題への補足:格差の少ない日本の賃金制度

2016年07月21日 11時32分52秒 | 労働
賃金問題への補足:格差の少ない日本の賃金制度
 前回、正規従業員と非正規従業員の賃金格差に触れ、解決策は非正規の賃金を上げるのではなく、非正規をできるだけ正規にしていくことだと書きました。
 
 残念なことですが、今、日本では格差問題の深刻化が言われています。そして、格差発生の原因として、非正規従業員の著増の問題が指摘されています。

 確かに、非正規雇用が雇用者の4割を占めるという事態は異常でしょう。統計上では、非正規のうち、「正規の仕事がないから」は20パーセント弱で年々減少気味です。そして「自由な時間に働きたい」「家計補助のため」が50パーセント弱です。しかし、それ以外の理由も含め、見方にもよりますが、本音は、非正規の半分ぐらいは「できれば正規で働きたい」と考えているのではないでしょうか。

 賃金格差を見ますと、これは毎月勤労統計(本年4月)の一般労働者とパートタイム労働者(現金給与総額)の数字ですが、月額で、それぞれ32万5千円と9万6千円という格差です。格差社会化の阻止に、今、まず必要なのは、非正規労働者の正規転換でしょう。

 前回指摘していますように、正規の賃金は企業内の賃金制度・労使協定で決まります。一方、非正規の賃金は地域のマーケットで決まります。両者の直接の関係はありません。

 欧米流にいえば、マ―ケットの賃金が正しいのでしょう。しかし、日本企業では、正規労働者の賃金は社内の制度で決め、その水準は企業の賃金支払能力で決まります。同じ産業でも業種でも、企業別に賃金水準は違います。

 企業内の賃金制度での日本の特徴は「 格差が少ないこと」です。最近年収1億円超の経営者が400人ほどいるようですが、初任給20万としてボーナス4ヶ月で年収320万円、トップが1億円でも格差は31倍です。一般的な数字ではせいぜい20倍でしょう。
 欧米の正確な統計はないようですが、部分調査などの何百倍という数字と大違いです

 日本では伝統的に、経営トップは社員の中から昇進していくので、役員になっても、企業の昇進のハシゴの延長線上で給与が決まってきていたのです。
 欧米のように、経営陣の給与は別物で、別物のマーケットがあったり、業績連動で巨額の給与が支払われることは通常ありません。

 こうした賃金・給与システムは、伝統的な社会意識、企業文化の中で形成されてきたものです。
 そして、日本の高度成長期から1980年代の前半のジャパンアズナンバーワンの時代まで、日本の企業の成長力を支えてきたのも、この企業文化です。

 円高による長期の経済低迷で自信を無くした日本企業ですが、だからと言って、日本的なものを捨ててしまっていいのではなくて、矢張りより良い経済社会を構築していくうえで、大事なものは良く選別して確り残してく必要があるようです。いつかはそれが国際的な規範になるかもしれません。

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